山田克哉『核兵器のしくみ』

原子力爆弾と原子力発電はどちらも「核分裂連鎖反応」という同じ物理現象を基にしており,この仕組みについて誰でもわかりやすく理解できるように書かれているのが本書.海の向こうで核実験とミサイルの発射訓練が行われ,そして,国内では原発再稼働が問題…

『岸辺露伴は動かない 短編小説集 (1) (2)』

ウルトラジャンプ2017年8月,9月号の特別付録.4人の作家による5編の短編小説で,どれも歴とした『岸辺露伴は動かない』で面白かった.『岸辺露伴は〜』は,荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』に登場する岸辺露伴が主人公のスピンオ…

吉上亮『PSYCHO-PASS GENESIS 4』

アニメ『PSYCHO-PASS』の時代以前,スキャンにより人の精神を測って潜在犯を割り出すシビュラシステムが導入され始め,日本社会の構造が大きく変遷しつつある時代を書いた『GENESIS』シリーズの4作目.スピンオフシリーズ最後の作品だが,個人的にはアニメ1…

王城夕紀『青の数学』

ネット上に設けられた「E2」という空間で,互いにハンドルネームしか知らない高校生たちは数学の問題を解いて競い合う.その過程で,彼らは「なぜ数学をするのか」「なぜ決闘をせねばならないのか」と自問し,疑問をぶつけ合う.数学をバトルものとして魅せ…

池上彰『知らないと恥をかく世界の大問題 7』

【目次】 プロローグ 新しい帝国主義時代の到来 第1章 大転換の中心「イスラム世界」の変化と世界への波及 第2章 ヨーロッパは受け止めきれるか? 第3章 内向きになるアメリカの苦悩と巻き返し 第4章 したたか中国の戦略と東アジア 第5章 せまりくる人…

森博嗣『χの悲劇』

雨の中のトラム内で起こった通商委員毒殺事件.その場に居合わせたエンジニアの島田文子は,殺害前に彼から昔の飛行機事故と「x」と呼ばれる人物について尋ねられていた.ホテルの部屋に差し込まれた「χ」のカード.死体の手首に残された「x」のマーク.果た…

エラリー・クイーン『Xの悲劇』

雨の中の満員電車内で起こった株式仲介人毒殺事件.放蕩者の彼を殺害する動機がある関係者が何人も同乗していたにも関わらず,犯人は捕まらない.そこで警視と検事が相談しに行ったのが,趣きのある館に住む老俳優のドルリイ・レーン氏.彼には犯人がわかっ…

吉上 亮『PSYCHO-PASS GENESIS 3』

厚生省によるシビュラ,サイマティックスキャン,犯罪係数などの導入以前を描く『GENESIS』シリーズも3作目.1と2は,アニメ1期では執行官だった征陸さんの刑事時代の話だったが,本作と次作は新しいキャラクタ,厚生省麻薬取締局の捜査官が主人公となる.本…

​ 西加奈子『うつくしい人』

​マイナス状態の主人公が何かを通してプラスに転じる,西さんのいつも通りの作品.ただ,主人公である30過ぎの女は,小説冒頭から鬱々としていて重い.自意識過剰と場の空気を読むことで,心がもうパンパンに張り詰めている.正直,「うわっ,めんどくさっ」…

西加奈子『ふる』

いつもどおりの西さんらしい小説.全体を通したフィクション的な要素によって,主人公の内面が鮮明になり,また変化の起点となる.こういう内面を書けるというが,小説の長所だろう.読んだあとに元気が出るね. ふる (河出文庫) 作者: 西加奈子 出版社/メー…

司馬遼太郎『新装版 王城の護衛者』

佐幕と勤王,攘夷と開国が入り乱れる混沌とした幕末が舞台の短編5作. あえて,短編それぞれの主人公の名前をここでは書かない. 表題作の『王城の護衛者』の主人公は,愚直なまでに天皇に仕え,天皇の唯一の頼みであった会津藩主.本当に「誠」の字のような…

森博嗣『彼女は一人で歩くのか?』

森博嗣の新刊です.以上,終わり. うん,それでいいと思う.森博嗣先生の作品は,振れ幅がけっこうあって,理系ミステリィ作家と呼ばれていた(いる?)けれど,それ以外にもSF,ハードボイルド,チャンバラ小説も書くし,分類不能な作品も多い.『スカイ・…

宮藤官九郎『NHK連続テレビ小説 あまちゃん 電子版完全シナリオ集 全26巻セット』

今さらだけれど,とても面白かった.たくさんの人がハマったのも納得の脚本でした.放送も一応全部録画しているはずなんだけれど,一度に見ると毎回のオープニングと回想シーンが多くて(毎日1話ずつ見る人には良いんだけど)ちょっと飽きちゃうんだよね.と…

堀江貴文『刑務所わず。 塀の中では言えないホントの話』

堀江貴文氏の1年8ヶ月間に渡る刑務所生活のラスト数ヶ月の日記.『刑務所なう。』『刑務所なう。シーズン2』と本書を合わせて3部作らしい.獄中生活はきっと誰でも多少は興味あることで,自身が収監されることを良いことに,日々の生活と時事ネタを有料メル…

殊能将之『鏡の中は日曜日』

鏡の中は日曜日 (講談社文庫) 作者: 殊能将之 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2005/06/15 メディア: 文庫 購入: 8人 クリック: 48回 この商品を含むブログ (82件) を見る 推理小説を推理する小説,と言えばいいのだろうか.いわゆる本格ミステリーというも…

綾辻行人『十角館の殺人』

謎の殺人事件のあった無人の島を訪れた推理小説研究会のメンバーたち.単純な好奇心から始まった合宿は,殺人予告とも取れるメッセージから不穏な空気に包まれる.特徴的な館,移動と連絡手段の途絶,行方不明の容疑者,死人からの手紙,などなど推理小説の…

吉上亮『PSYCHO-PASS GENESIS 2』

システムの弱点を利用した大規模な犯行,その背景にある主犯の思想や理想を探り,犯人を法の裁きの元へ引きずり出す.これこそアニメ1期,2期,劇場版と続いてきた『PSYCHO-PASS』の醍醐味であり,それはこの小説にも受け継がれている. PSYCHO-PASS GENESIS…

池上彰『知らないと恥をかく世界の大問題6』

毎年1冊のペースで,今回が6冊目.その1年間に国内と世界で起こった政治経済の出来事を,歴史や宗教などの背景もあわせて,わかりやすくまとめたシリーズ.今回興味深かったのは,ロシアのウクライナ侵攻にある背景(緩衝地帯),日本と中国・韓国の歴史認識…

森博嗣『本質を見通す100の講義』

見開き1ページで1つのテーマで書く,100のエッセイ集.講義シリーズは4作目らしい.今回は「研究者」という単語が多かった気がする.理化学研究所のあの事件についても(おそらく初めて)言及している(まぁ,そうですよねという感じだが).一方で,「抽象…

山内マリコ『ここは退屈迎えに来て』

地方都市で青春時代を過ごすってこういうことだよな,ってすごく共感できる短篇集.車さえあれば不自由なく過ごすことができる程度の田舎で,何が不満なのかと言えば,タイトル通り「退屈」だからだろう.出会いの少なさや選択肢の少なさを地元のせいにして…

西加奈子『漁港の肉子ちゃん』

港町に移り住んでいる,肉子ちゃん(38歳,ツッコミどころ満載,鈍感でダサい)とキクりん(可愛い小学生,気が付いてしまう子)の対照的な2人.キクりんから見る肉子ちゃんや町の人々は,なんだかとても魅力的で,キクりんは(的確なツッコミを入れながらも…

西加奈子『円卓』

公団住宅に家族8人で住む渦原家.その末っ子「こっこ」は孤独に憧れる小学3年生.平々凡々な家族は「こっこ」にとっては不満の種.友人の吃音も,眼帯も,不整脈も「こっこ」にとっては憧れの的.夏.ひと夏で「こっこ」は何を思い,何を悟る.言葉にならな…

森博嗣『マインド・クァンチャ The Mind Quencher』

ヴォイド・シェイパシリーズの5作目.シリーズものだけれど作品単体で完結するので何作目から読み始めてもいいし,特に今作はそう思う内容だった.プロローグからとんでもない展開で,そして広報担当者さん(@idobatagumiさん)のツイートもあって,読みなが…

吉上亮『PSYCHO-PASS GENESIS 1』

「人間の心理状態や性格的傾向を,計測し数値化できるようになった未来世界」が完成する少し前,アニメ1期の征陸智己が警視庁の新任刑事時代から話は始まる.苦しい時代を乗り越えた後の2080年代の東京を舞台としている.アニメではすでにシビュラシステムに…

西加奈子『炎上する君』

西加奈子さんの短篇集. 椎名林檎さんと西さんとの対談(NHK『Switch』)で,林檎さんが読んで号泣したという短編「空を待つ」.それが収録されているということで『炎上する君』を選択.当たりでしたね.今度どうしようもなく落ち込んだときに,この短篇集…

吉田尚記『なぜ,この人と話をすると楽になるのか』

ニッポン放送のアナウンサーによるコミュ障克服法の伝授本.アナウンサーだから話すのが好きそうだし,得意なんでしょ?と思うけれど,元々「コミュ障」で仕事でいろいろ辛い失敗をして,それでも会話を分析して繰り返し練習して,今の彼があるらしい(とは言…

西加奈子『通天閣』

さえないおっさんとさえない若い女,それぞれの物語.彼らの目線で見る大阪の風景は,人間は,やはりどこかさえなくて,そしてシニカルだ.そんなおっさんと女の日常が,交互に語られていく.彼らは少しづつ変化してゆくし,でも,やっぱり相変わらずだ. こ…

森博嗣『孤独の価値』

大学の先生を辞め,執筆業も引退しつつあり,人との直接的な交流を絶っている森博嗣が,まさにその「隠居生活」について語る!...なんて書くと一般の人には縁のなさそうな生活(一部の人は憧れるらしい)になってしまうが,本書は以前よりブログやエッセイなど…

森博嗣『サイタ×サイタ』

Xシリーズの5作目.椙田の事務所に持ち込まれた匿名の人物からのストーカ男の素行調査依頼.その尾行調査中に,近頃話題となっていた連続爆発事件が小川たちの近辺で起こり,ストーカ男との関係性を疑うが...? サイタ×サイタ (講談社ノベルス) 作者: 森博嗣 …

石井彰『木材・石炭・シェールガス 文明史が語るエネルギーの未来』

エネルギー問題というのは,語る人の立場でころころ変わるので敬遠していたけれど,そろそろ真面目に考えてみましょうか.ということで1冊目.しかし,本書ですでに最適解が出ているのでは?と思えるほどの良書.再生可能エネルギー,石炭・石油・天然ガス,…