小説

吉上亮『PSYCHO-PASS GENESIS 4』

アニメ『PSYCHO-PASS』の時代以前,スキャンにより人の精神を測って潜在犯を割り出すシビュラシステムが導入され始め,日本社会の構造が大きく変遷しつつある時代を書いた『GENESIS』シリーズの4作目.スピンオフシリーズ最後の作品だが,個人的にはアニメ1…

王城夕紀『青の数学』

ネット上に設けられた「E2」という空間で,互いにハンドルネームしか知らない高校生たちは数学の問題を解いて競い合う.その過程で,彼らは「なぜ数学をするのか」「なぜ決闘をせねばならないのか」と自問し,疑問をぶつけ合う.数学をバトルものとして魅せ…

森博嗣『χの悲劇』

雨の中のトラム内で起こった通商委員毒殺事件.その場に居合わせたエンジニアの島田文子は,殺害前に彼から昔の飛行機事故と「x」と呼ばれる人物について尋ねられていた.ホテルの部屋に差し込まれた「χ」のカード.死体の手首に残された「x」のマーク.果た…

エラリー・クイーン『Xの悲劇』

雨の中の満員電車内で起こった株式仲介人毒殺事件.放蕩者の彼を殺害する動機がある関係者が何人も同乗していたにも関わらず,犯人は捕まらない.そこで警視と検事が相談しに行ったのが,趣きのある館に住む老俳優のドルリイ・レーン氏.彼には犯人がわかっ…

吉上 亮『PSYCHO-PASS GENESIS 3』

厚生省によるシビュラ,サイマティックスキャン,犯罪係数などの導入以前を描く『GENESIS』シリーズも3作目.1と2は,アニメ1期では執行官だった征陸さんの刑事時代の話だったが,本作と次作は新しいキャラクタ,厚生省麻薬取締局の捜査官が主人公となる.本…

​ 西加奈子『うつくしい人』

​マイナス状態の主人公が何かを通してプラスに転じる,西さんのいつも通りの作品.ただ,主人公である30過ぎの女は,小説冒頭から鬱々としていて重い.自意識過剰と場の空気を読むことで,心がもうパンパンに張り詰めている.正直,「うわっ,めんどくさっ」…

西加奈子『ふる』

いつもどおりの西さんらしい小説.全体を通したフィクション的な要素によって,主人公の内面が鮮明になり,また変化の起点となる.こういう内面を書けるというが,小説の長所だろう.読んだあとに元気が出るね. ふる (河出文庫) 作者: 西加奈子 出版社/メー…

司馬遼太郎『新装版 王城の護衛者』

佐幕と勤王,攘夷と開国が入り乱れる混沌とした幕末が舞台の短編5作. あえて,短編それぞれの主人公の名前をここでは書かない. 表題作の『王城の護衛者』の主人公は,愚直なまでに天皇に仕え,天皇の唯一の頼みであった会津藩主.本当に「誠」の字のような…

殊能将之『鏡の中は日曜日』

鏡の中は日曜日 (講談社文庫) 作者: 殊能将之 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2005/06/15 メディア: 文庫 購入: 8人 クリック: 48回 この商品を含むブログ (82件) を見る 推理小説を推理する小説,と言えばいいのだろうか.いわゆる本格ミステリーというも…

綾辻行人『十角館の殺人』

謎の殺人事件のあった無人の島を訪れた推理小説研究会のメンバーたち.単純な好奇心から始まった合宿は,殺人予告とも取れるメッセージから不穏な空気に包まれる.特徴的な館,移動と連絡手段の途絶,行方不明の容疑者,死人からの手紙,などなど推理小説の…

吉上亮『PSYCHO-PASS GENESIS 2』

システムの弱点を利用した大規模な犯行,その背景にある主犯の思想や理想を探り,犯人を法の裁きの元へ引きずり出す.これこそアニメ1期,2期,劇場版と続いてきた『PSYCHO-PASS』の醍醐味であり,それはこの小説にも受け継がれている. PSYCHO-PASS GENESIS…

西加奈子『円卓』

公団住宅に家族8人で住む渦原家.その末っ子「こっこ」は孤独に憧れる小学3年生.平々凡々な家族は「こっこ」にとっては不満の種.友人の吃音も,眼帯も,不整脈も「こっこ」にとっては憧れの的.夏.ひと夏で「こっこ」は何を思い,何を悟る.言葉にならな…

森博嗣『マインド・クァンチャ The Mind Quencher』

ヴォイド・シェイパシリーズの5作目.シリーズものだけれど作品単体で完結するので何作目から読み始めてもいいし,特に今作はそう思う内容だった.プロローグからとんでもない展開で,そして広報担当者さん(@idobatagumiさん)のツイートもあって,読みなが…

吉上亮『PSYCHO-PASS GENESIS 1』

「人間の心理状態や性格的傾向を,計測し数値化できるようになった未来世界」が完成する少し前,アニメ1期の征陸智己が警視庁の新任刑事時代から話は始まる.苦しい時代を乗り越えた後の2080年代の東京を舞台としている.アニメではすでにシビュラシステムに…

西加奈子『炎上する君』

西加奈子さんの短篇集. 椎名林檎さんと西さんとの対談(NHK『Switch』)で,林檎さんが読んで号泣したという短編「空を待つ」.それが収録されているということで『炎上する君』を選択.当たりでしたね.今度どうしようもなく落ち込んだときに,この短篇集…

西加奈子『通天閣』

さえないおっさんとさえない若い女,それぞれの物語.彼らの目線で見る大阪の風景は,人間は,やはりどこかさえなくて,そしてシニカルだ.そんなおっさんと女の日常が,交互に語られていく.彼らは少しづつ変化してゆくし,でも,やっぱり相変わらずだ. こ…

森博嗣『サイタ×サイタ』

Xシリーズの5作目.椙田の事務所に持ち込まれた匿名の人物からのストーカ男の素行調査依頼.その尾行調査中に,近頃話題となっていた連続爆発事件が小川たちの近辺で起こり,ストーカ男との関係性を疑うが...? サイタ×サイタ (講談社ノベルス) 作者: 森博嗣 …

殊能将之『ハサミ男』

事前にどんな作品かも知らず,ジャンルだけはミステリーなのかな程度で,タイトルだけでなんとなく買って読んでみたらアタリだった.こういう経験って素晴らしい.他人のオススメって否が応でも期待値が高くなってしまうから(だって勧めるときに良いことしか…

森博嗣『ムカシ×ムカシ』

Xシリーズの4作目.資産家夫婦が何者かによって殺害される.主人公たちは,彼らの残した美術品の鑑定のため,その資産家の邸宅に出入りするようになるが,そこでまた新たな死体が... ムカシ×ムカシ (講談社ノベルス) 作者: 森博嗣 出版社/メーカー: 講談社 …

サン=テグジュペリ『夜間飛行』

南米の郵便飛行を行う会社の社長,パイロット,監督官の物語. 一番の主人公は社長だろう.彼は,部下を鼓舞し活気を与え,パイロットを勇敢に空へと立ち向かわせ,監督官に部下の小さなミスの処罰を強いる.その行動は行き過ぎているように思うのだが,これ…

森博嗣『フォグ・ハイダ』

森博嗣の書くチャンバラ小説,ヴォイド・シェイパシリーズの4作目.このシリーズの面白さは,山で師匠に育てられた主人公が,人里に降りて旅をする中で,初めて見聞きしたことや出会った人々,闘いの最中に観察したことについて,考察する点にあると思う. …

桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』

とても素敵で不思議なタイトルである.ちょっと気取った,奇をてらったタイトルと思われるかもしれないが,読後は重さが違っているだろう.ちゃんと意味があるのです. 桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』読了.タイトルが素敵で,だからって名前負け…

伊坂幸太郎『マリアビートル』

「殺し屋」の話で,『グラスホッパー』の続編.東北新幹線に乗り合わせた数人の「業者」といけ好かないませた中学生は,それぞれの目的や思惑通りもしくはそれとは裏腹に,トラブルに巻き込まれていく... マリアビートル (角川文庫) 作者: 伊坂幸太郎 出版社…

森博嗣『キウイγは時計仕掛け』

Gシリーズ9作目.犀川研,国枝研のメンバの参加する学会の本部に謎のキウイが届く.そこにはギリシャ文字"γ"(のような印)が! キウイγは時計仕掛け (講談社ノベルス) 作者: 森博嗣 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2013/11/07 メディア: 新書 この商品を含…

森博嗣『喜嶋先生の静かな世界』

ハードカバーで一度読んだけれど,文庫版になったので再読. 主人公が,研究室でドクタの先輩と喜嶋先生に出会い,研究の面白さを知り没頭していく,静かできれいな小説.自伝的な小説とは言うけれど,具体的な部分は実際の経験とかなり異なっているのではな…