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森博嗣『喜嶋先生の静かな世界』

小説 森博嗣

ハードカバーで一度読んだけれど,文庫版になったので再読. 

主人公が,研究室でドクタの先輩と喜嶋先生に出会い,研究の面白さを知り没頭していく,静かできれいな小説.自伝的な小説とは言うけれど,具体的な部分は実際の経験とかなり異なっているのではないだろうか.しかし,研究に対する姿勢や誠実さ,「研究とは何か」という抽象的なことは,この小説から受け取ることができる.「研究の大切なことはすべてこの小説が教えてくれた」と言ってもいい,僕にとって大切な1冊.

引用は,オイゲン・ヘリゲル『日本の弓術』.

解説は,養老孟司 氏.

喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)
 

 研究を山に登ることに例える箇所は,とても身に染みる.自分が修士のときを振り返ると,高い山に挑戦するというよりは同じ高さの障害を効率良く飛び越えていた感じだった.ただただ上から仕事が振ってきて,それをどんどん片付ける.加速しているのに,高いところに行けず見通しも良くならない.ひたすらハードル競争をしているみたいだった.大学の知り合いを観察してみても「研究」をしていた人を思い浮かべられない.こんな世界にいる人が本当に羨ましい.