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村上春樹 柴田元幸『翻訳夜話』

わざわざ紹介するまでもない小説家・村上春樹東京大学文学部助教授(当時)・柴田元幸が,フォーラムで聴衆からの質問を受けながら翻訳について語った1冊.技術的なことも少しは話しているが,メインは「どうして翻訳をするのか」という問いに対する自分の答えだろう.村上さんの翻訳を通して著者から何かを得よう,という姿勢がすごい.そして楽しそうだ.

 また,中盤では,レイモンド・カーヴァーの「COLLECTORS」とポール・オースターの「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」を,村上氏と柴田氏がどちらも翻訳し,その訳を比較する,ということもやっている.自分の印象としては,村上訳は少しわかりづらく全体的に暗い,柴田訳はひっかかることもなく素直.本書の中では,もっと詳細に各自のこだわりや無意識の癖が分析されている.

 

平成12年に出版された本書.まだ村上春樹訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』や柴田元幸訳の『ナイン・ストーリーズ』は世に出ていない.この本でもサリンジャーは1部しか出てこない.でも,そこが面白かった.P94,村上春樹の発言から.

あとですね、僕は『フラニーとズーイー』を関西弁で翻訳したかったんだ。ズーイーのしゃべりなんて標準語で訳されていると、「ふん、何言ってるんだい」って思うんだけど、関西弁でやると、なかなか味があっていいんですよ。

関西弁の『フラニーとゾーイー』読んでみたい!そして,本書の続編が『翻訳夜話 2 サリンジャー戦記』なのである.僕にとっては,本命はこちら.楽しみだ.

翻訳夜話 (文春新書)

翻訳夜話 (文春新書)

 

以下,余談. 

僕が「村上春樹」を初めて知ったのは大学1年頃で,作品は『グレート・ギャツビー』だった.ヘアワックスの「ギャッツビー」を連想して,なんとなく買ったと記憶している.だから,僕の中では「村上春樹」は翻訳家だと最初は思っていたのである.そして,その本は序盤で挫折して積まれたままである.そろそろ読めるかなぁ.