読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

吉田武『呼鈴の科学 電子工作から物理理論へ』

スイッチを押すとコイルに電気が流れて電磁石となり,引き付けられた鎚が鈴を鳴らす.呼鈴の単純な構造の紹介から始まった講義では,話は電磁気や力学から量子力学まで派生し,視点は電子から地球規模まで移動し,電子工作の具体例と物理の一般論を往復する.公式を暗記する物理学でも数式(微積分)を使った物理学でもない,身近な経験や常識・目の前の現象から導かれた物理学の魅力,そして電子工作で作った実験装置で物理法則を確かめられることの面白さを魅せた本である. 

呼鈴の科学 電子工作から物理理論へ (講談社現代新書)

呼鈴の科学 電子工作から物理理論へ (講談社現代新書)

 

【目次】 

第0講 科学は観察にはじまる

第1講 二種類の磁石

第2講 磁石と力

第3講 常識に沿って考える

第4講 電子が持つ三つの顔

第5講 誘導される電子

第6講 呼鈴は何故鳴るか

副音声ー解説と補追

 

この本の一番面白いところは,工作した実験装置で現象を確かめ,それを教科書に書いてあるような一般論にまで抽象化し,新たな仮説を提案し,それをまた別の実験装置で確かめる,という電子工作(具象)と物理理論(抽象)のサイクルだろう.しかし,まさか呼鈴から相対性理論の話が出て来るとは思わなかったし,しかも理解が出来るとも思っていなかった.個人的には,高校物理でちゃんと理解できずにこれまで放置し続けたコンデンサとインダクタンスを理解できたのは大きい.

電子工作やってみたいなぁ.キットもここ(http://www.wakamatsu-net.com/cgibin/biz/page.cgi?cate=4925&page=#49250077)で揃うようだ.

というか,ここまで示してくれていて越えるべき障害をひくーーーくしてくれているのだから,やろう!自宅研究室を作ろう!!

 

【蛇足】

ページをパラパラとめくれば分かると思うが,文字がびっしりである.奇妙なことに(?),各ページの文章の終わりは,きっちり最終行の一番下なのである.基本的にページを跨がないように調整されている.文章や図の大きさで調整できるとは言っても.300弱のページ全体にわたってこのルールが守られていて「ここまでやるか」と思ってしまった.少しでも作文をしたことがあれば,わかるだろう.その苦労を想像すると,ため息がでてしまう.電子書籍化されても,この書式的な美しさが損なわれないことを祈る.