コンラート・ローレンツ『ソロモンの指輪』

猿や魚,鳥などと一緒に生活し,日々の観察を綴った動物行動学者のエッセイ.文章を読む限りでは,動物がとても好きなオジサンが,動物たちとの日常をおもしろく紹介している感じだが,著者は鳥のヒナが最初に見た物を親と認識する"刷り込み"を発見した人で,ノーベル賞を受賞しているらしい.こんな紹介では専門の人から怒られそうだが,著者の肩書きとかで気負わずに読み始めてみれば,ユーモアのある文章に笑って,時々その観察力や行動力に驚くだろう.時に,動物の行動を人の行動の類似と考えることに対してとても慎重で,科学者らしさを覗かせる部分もある.

著者は,渡り鳥や猿などをほぼ放し飼いしていて,動物たちに振り回されている.猿が著者の娘に危害を与えかねないため,取った方法が面白かった.あと,著者の父親が鳥を室内まで呼び込んだために起こった大惨事なんかも笑い話として書かれている.

このように,いろんな動物を飼った著者がペットとして勧めるのは,小さなアクアリウム(「2 被害をあたえぬもの―アクアリウム」)を作ることや,ハムスター(「8 なにを飼ったらいいか!」)や犬(「10 忠誠は空想ならず」)を飼うことだと言う.普通のアドバイスだと感じられるかもしれないが,たくさんの動物を観察してきただけあって,その動物を飼う理由や魅力はさすがにやはり奥が深い.また,長期間飼えるかもしれないけれど,本来の姿ではなく次第に弱っていく亀や,檻の中で飼育されている動物園の動物に対して,著者は苦言を呈している.動物を飼うのであれば気をつけたい.

アクアリウムの話を,メモがてら簡単に.アクアリウムは,池から水草を取ってくるだけでいい.著者の目指すアクアリウムは,その水槽だけで一つの生態系になるような環境である.つまり,ポンプなどで空気を循環させたりせず,太陽光による水草光合成だけを酸素の供給源とするのである.たしかに,こういう最適化されるまでの過程や試行錯誤は,ペットショップで一揃い買ってくるより楽しいそうだ.同じ池や沼から同じ水草2種類を取ってきたとしても,平衡時にどちらが繁栄もしくは両者が同様に共存しているかはわからない.だからこそ興味深い.子供にはやらせてみてはいかがだろうか?

ソロモンの指環―動物行動学入門 (ハヤカワ文庫NF)

ソロモンの指環―動物行動学入門 (ハヤカワ文庫NF)

 

動物本来の習性に関する話では,闘魚やカラスのエピソードがある.もしかしたら今では図鑑に記述されているかもしれないけれど,著者が直接観察した動物の行動や習性をユーモアを交えて話してくれているのは,単純に楽しい.楽しいことをしている人の話は,だいたい楽しいからね.この本を読んだら,動物行動学を目指す人もいるのかもしれないな.