石井彰『木材・石炭・シェールガス 文明史が語るエネルギーの未来』

エネルギー問題というのは,語る人の立場でころころ変わるので敬遠していたけれど,そろそろ真面目に考えてみましょうか.ということで1冊目.しかし,本書ですでに最適解が出ているのでは?と思えるほどの良書.再生可能エネルギー,石炭・石油・天然ガス原子力の一長一短を理解した上で,日本の人口と経済規模,地形や資源に合わせたベストミックスを提案している.本書を読んでもまだ「原発は絶対にダメ!」「原発廃止で足りなくなった分は,太陽光や風力で賄おう」などと言う人はいないだろうと思う(でも,そういう人ってたぶんこの本を読まないよね).

 不勉強のため初めて知ったのは,産業革命以前の欧州や日本では,生活のための森林伐採が進んでおり文明崩壊の寸前だったということ.似たような話で,モアイ像のあるイースター島などの例を知っていた(正直,バカだなぁと笑っていた)が,まさか今の先進国の数百年前もそのような状態だったとは驚きである.そして,今の経済規模を保ったまま,再生可能エネルギーの割合を無理に増やそうとすると(山を切り開いて大きな太陽光発電を設置する,とか),確実に環境破壊・国土崩壊に繋がると著者は言う.

再生可能エネルギー導入のモデルとされるデンマークスウェーデン,ドイツの例に対して,著者は反対意見を述べている.国土面積や人口,経済規模,電気料金を考えると日本のお手本にはならないのである.また,デンマークは平らな土地で風力やバイオマスに向いており,日本は急峻で降水量が多いため水力発電に向いている.すでに,その土地に合った再生可能エネルギーが最適な形で導入されているのである.

さらに,著者が二酸化炭素の制限と原子力発電の有無を考慮したベストミックスシミュレーションの割合は,突飛なものではなく,数字は違えども中学高校の教科書で見たようなエネルギーの比率である.なるほどねー,と納得したわけである.

本書がエネルギー問題の最適解では?とこの記事のアタマで書いたけれど,読んでいてひとつだけ「これって本当かな,大丈夫かな?」と感じた点がある.それは「地球温暖化の原因はまだわかっておらず,人工的な二酸化炭素排出が直接的な原因かはわからない」と言っている点である.二酸化炭素排出による地球温暖化はまだリスクだけれど,再生可能エネルギー導入による自然破壊は確実だ,と.本書だけでは,解決しなかったので大河内直彦『チェンジング・ブルー 気候変動の謎に迫る』を読んでみたところ,どうやら確かに地球の温度の変動は未だに解決されておらず,石井氏の論も結果的に正しいと言える.『チェンジング・ブルー』の感想は,来週書くことにしよう.

とりあえず,エネルギー問題に関してオススメの新書です.

チェンジング・ブルー―気候変動の謎に迫る

チェンジング・ブルー―気候変動の謎に迫る