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森博嗣『孤独の価値』

森博嗣 エッセイ

大学の先生を辞め,執筆業も引退しつつあり,人との直接的な交流を絶っている森博嗣が,まさにその「隠居生活」について語る!...なんて書くと一般の人には縁のなさそうな生活(一部の人は憧れるらしい)になってしまうが,本書は以前よりブログやエッセイなどで「寂しさは悪いものではない」と述べていた森さんが「孤独」について再考察し,その価値を見つめなおしたものである.孤独を恐れている人,寂しさで押し潰されそうになっている人は,この本を読めば少しでも楽になれるかもしれない.

 

孤独の価値 (幻冬舎新書)

孤独の価値 (幻冬舎新書)

 

 

【目次】

まえがき

第1章 何故孤独は寂しいのか

第2章 何故寂しいといけないのか

第3章 人間には孤独が必要である

第4章 孤独から生まれる美意識

第5章 孤独を受け入れる方法

あとがき

 

森さんは前からブログやエッセイで「孤独」「寂しさ」「1人」「マイナ」などについて断片的に述べることはあったけれど,このように1冊を通して主張するは初めてである.具体例を交えて説明したり.自著を引用したりと以前よりも丁寧であるように感じた.サインカーブや加速度を用いて孤独と楽しさを説明したのも面白かった.テーマが抽象的であるのと,ページ数に余裕があるというのが一因だろうか.また,小説の読者以外の人に向けて書いているというのが伺える.

また,第5章では孤独をどうやって受け入れればいいか,その具体的な方法まで提案している.これもまた初めてのことだろう.小説を書くことは薦めないんだなぁ(あれはビジネスだからね).そして,あとがきの「とは言ったものの...」という感じが,ここまで書いてきたのにズルい!と思ったが,自身を「完全に孤独な人」として格好良く演出しきるよりは誠実かな,と思った.これもまた親切である.うん,この本って,つまり森さんって,全般的に親切で優しいんだよなぁ.

この本は,マスコミや広告の「家族や仲間は大事!」「みんなとつながろう!」というメッセージへのカウンタという面がある.同じように「楽しい仕事をしよう」「やりがいは大切」という雰囲気(あからさまな主張もある)へのカウンタとして,森さんは『「やりがいのある仕事」という幻想』を書いている.こちらもオススメ.おじさんたちからしてみれば,本書や『「やりがい〜』の主張は当たり前過ぎる(けど口にはしない)ことかもしれないけど,大学生から社会人なりたてぐらいの若い人(もっと広い層かもしれない)の中には悩んでる人もいるんですよ,こういう本も必要なんですよ,と思った.