西加奈子『通天閣』

さえないおっさんとさえない若い女,それぞれの物語.彼らの目線で見る大阪の風景は,人間は,やはりどこかさえなくて,そしてシニカルだ.そんなおっさんと女の日常が,交互に語られていく.彼らは少しづつ変化してゆくし,でも,やっぱり相変わらずだ.

この作品の何が面白いかったかと言えば,まず人物の描写.考えている事と実際の行動と,そこから透けて見える本心がそれぞれちぐはぐで,それがとても人間臭くてよかった.1番好きなのは,ショックなことがあって床にゲロを吐いちゃった後の行動.意外なんだけど,こういうわけわかんないこと,人ってよくやるよなぁって.あと,せっかく良いメッセージ言ってくれてるのに,考えてることそれかい!って場面も好き.

そして,日本語のリズムと間が良くて,読んでいると段々と調子に乗ってきて惹きこまれていく.力強さも伝わってくる.日本語っていいな,って思った.

通天閣 (ちくま文庫)

通天閣 (ちくま文庫)

 

 

このツイートにある通り,西加奈子さんの小説を読むのは初めて.雑誌『ダ・ヴィンチ』でオードリーの若林さんとの対談やテレビの『SWITCHインタビュー達人達』で椎名林檎さんとの対談で,すごくエネルギッシュな人だと感じた.また,若林さんや林檎さんのことをよく観察しているのも印象的だった.(椎名林檎さんのライブ『林檎博'08』で,最後に舞台からはけるときの表情を指摘していて,なるほどなぁ,と).また,自分が好きな芸人とアーティストが,西さんの作品を読んでるというのも,当然興味が湧いた理由のひとつだ.

本屋をいろいろ周って,文庫本コーナーの平積みで偶然見つけたかったのだけれど,どの本屋でも本棚に入っていて「にーし,にーし...っと」と探すのはなんか違うと感じた.ので,Kindleで唯一読める『通天閣』をダウンロードした次第です.そのときは「偶然」がほしかったのです.だって,偶然手にした作品が面白かった経験って,オススメされた作品の場合よりも幸せじゃん?

でも,今度は素直にオススメされたいなぁ,っと.次は何を読もうかなー