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吉上亮『PSYCHO-PASS GENESIS 1』

「人間の心理状態や性格的傾向を,計測し数値化できるようになった未来世界」が完成する少し前,アニメ1期の征陸智己が警視庁の新任刑事時代から話は始まる.苦しい時代を乗り越えた後の2080年代の東京を舞台としている.アニメではすでにシビュラシステムによる秩序が当然となっているが,見ている側としてはやはりこのシステムの成り立ちが気になるところだろう.本作では,今(2010年代)と2100年代の間の出来事が書かれていて,シビュラのある世界をリアルに感じさせてくれる.いやぁ,めちゃくちゃおもしろかった.こんな21世紀を経たら,そりゃあ市民はシビュラシステムでも喜んで受け入れるよなぁ,と.
そして,本作の見所のひとつは,厚生省と警視庁の対立,覇権争い.アニメでは,主人公が「厚生省公安局刑事課だ!」と名乗る場面があるけれど,ここで疑問に思わないといけないんですよね,公安の所属って,警視庁じゃないの?って.さも当然のように台詞があって,特に説明もなかったように思うけれど,その裏には実はこんな歴史があったのです!というのがこの小説.本作では,権限を広げようとする厚生省への警察庁の最後の抵抗,そして新しい正義や法の執行への刑事の戸惑いがまざまざと書かれている.『PSYCHO-PASS』の世界観,システムが興味深くて好きになった自分には,この小説は,まさにどストライクだった(キャラクタのノベライズ本としても十分面白いと思う.実際,征陸さんに今更だけど愛着が湧いたしさ).

アニメの番外編の単なるノベライズ,という位置付けではもったいないぐらい,SF小説としていろいろな視点やら問題点やらを投げかけてくれている,気がする.まるでこういう社会が訪れるのを予言しているかのように.

PSYCHO-PASS GENESIS 1 (ハヤカワ文庫 JA ヨ 4-6)

PSYCHO-PASS GENESIS 1 (ハヤカワ文庫 JA ヨ 4-6)

 

 さぁて,続き「2」が待ち遠しいですね.