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西加奈子『漁港の肉子ちゃん』

西加奈子

港町に移り住んでいる,肉子ちゃん(38歳,ツッコミどころ満載,鈍感でダサい)とキクりん(可愛い小学生,気が付いてしまう子)の対照的な2人.キクりんから見る肉子ちゃんや町の人々は,なんだかとても魅力的で,キクりんは(的確なツッコミを入れながらも)その人たちのことを本当に好きなことが伝わってくる.

とあることでクラスの女子が分裂するのだけれど,自分にとってはなぜだかとても心を動かされるテーマのようで,思わず泣いてしまいそうだった.そして,時間が経ってもクラスに歪さが残っていることをキクりんは知っていて,その原因に気付く場面が強く印象に残っている.「あぁ,これは凄い」とただただ思った.

その後からは一気に読んでしまった.そう,これはキクりんが主人公で,西加奈子が作者なのだから,キクりんが良い方へ変わる物語なのだ.そうなのだ(決して肉子ちゃんの習性を書いて終わる小説ではない).

漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)
 

西さんは本当に人の事が好きなんだなって改めて感じた.好きでなければ,人の何気ない仕草や感情をこんな描写することはできないだろう.一方で,この小説のキクりんみたいに,西さんは一歩引いて客観的になっている部分もあるんじゃないかなって思う.話をしてみたい作家さんである.