綾辻行人『十角館の殺人』

謎の殺人事件のあった無人の島を訪れた推理小説研究会のメンバーたち.単純な好奇心から始まった合宿は,殺人予告とも取れるメッセージから不穏な空気に包まれる.特徴的な館,移動と連絡手段の途絶,行方不明の容疑者,死人からの手紙,などなど推理小説の要素をこれでもかと盛り込んでくる.王道のミステリーが好きな人は,楽しめるのかも.

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

 

 物足りなかったのは,推理小説研究会のメンバーであれば,このような推理小説に出て来るような要素を,メタな視点で一蹴するのかと期待していたのだが,完全に「中の人」になってしまった点.研究会のメンバー同士で著名な推理小説家のニックネーム(「アガサ」や「エラリイ」など)で呼び合っていて,それも彼らの頭脳明晰さへのハードルを上げてしまったのだが,実際はただの大学生だった.関連してもう1点挙げると,登場人物たちが事件について話し合うときに,二言目には動機探しをするのには,どうにもついていけなかった.いやいや,それで犯人扱いしたらダメでしょ,もっと他に考えるべきことがあるじゃん,ってね.まぁ,登場人物がアタマ良過ぎたら,犯罪できないけれど.

途中から飽きて作者の意図を探りながら読んでしまった.何から目を逸らさせたいのだろう?と.もっとその世界に入り込める推理小説が読みたいなぁ.