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西加奈子『ふる』

いつもどおりの西さんらしい小説.全体を通したフィクション的な要素によって,主人公の内面が鮮明になり,また変化の起点となる.こういう内面を書けるというが,小説の長所だろう.読んだあとに元気が出るね.

ふる (河出文庫)

ふる (河出文庫)

 

あらすじを書いてもあんまり意味ないかなって思うので,主人公の池井戸花しすを表す文だけ引用しておく.

望む前に与えられる生活が続き、いつしか花しすは、望むことをやめた。自分の希望や願望を、口に出すことが、どこかいけないこと、はしたないことのように思えた。自分の意見を言わず、大人しくしておけば、大人たちが何かしらのことはしてくれる、そう思った。(P34より)

 

花しすは、人が傷ついたとき、顔が歪むのを見るのや、流れている時間が止まることが嫌なのだった。そしてそのことに関与しているのが自分であるということが、一番怖いのだった。(P164より)

 

どぉやん.彼女だけに見える白い丸いもの.そらから降ってくるように書かれたひらがな.何気ない会話の録音.同居人と2匹の猫.女性器にモザイクをかける仕事.愛情に裏打ちされた蔑み.新田人生.

 

「ヘルメッ!」

「じゃかましわ。」