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​ 西加奈子『うつくしい人』

​マイナス状態の主人公が何かを通してプラスに転じる,西さんのいつも通りの作品.ただ,主人公である30過ぎの女は,小説冒頭から鬱々としていて重い.自意識過剰と場の空気を読むことで,心がもうパンパンに張り詰めている.正直,「うわっ,めんどくさっ」って思った.これについて,西さんも文庫版あとがきで次のように述べている.

『うつくしい人』を、改めて読み返してみて、「随分面倒な精神状態にあったのやなこの作者」と思いました。それ私。

対談などのメディアで見る西さんは,エネルギッシュでポジティブな印象なのだけれど,この作品の執筆に取りかかった当時はしんどい時期だったらしく,それがこの作品や主人公に投影されている.たしかに,周りの人のいろいろと観察したり,空気が読めるような人(きっと他人の嫌なところや悪意も見えてしまう人)が,どうしてあんなにポジティブなんだろう,人を好きになれるんだろうって不思議で,でも,この小説を通してなんとなくわかった気がする.
主人公が少しずつ回復したように,作者の西さんも執筆後はスッキリしたようで,読後の自分もなんか気持ちが軽くなった.無理をしなくても,変わらず今のままでも,誰かにとってのうつくしい人であれたら,それでいいよね.

ちなみに小説の舞台は,直島かどこかの島だろう.宿泊はしてないけど,たぶん行ったことがある.いいよね,あそこら辺の島.

うつくしい人 (幻冬舎文庫)

うつくしい人 (幻冬舎文庫)