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エラリー・クイーン『Xの悲劇』

小説 エラリー・クイーン

雨の中の満員電車内で起こった株式仲介人毒殺事件.放蕩者の彼を殺害する動機がある関係者が何人も同乗していたにも関わらず,犯人は捕まらない.そこで警視と検事が相談しに行ったのが,趣きのある館に住む老俳優のドルリイ・レーン氏.彼には犯人がわかったようだが… 

Xの悲劇 (角川文庫)

Xの悲劇 (角川文庫)

 

推理小説では,なかなか犯人を突き止められない無能な警察の代わりにズバッと謎解きをする探偵役がいて,それは探偵に限らず,ある作品では大学の先生だったり,学生,無職の美女,美術品鑑定家の泥棒だったりする.他にもいろいろな「探偵」がいるだろう.彼ら彼女らはみな頭脳明晰で観察眼に優れ,ときには独自の方法で大胆に事件を調べ,なおかつ謎解き披露の語り口には個性や職業柄が現れる.こういうキャラクタの登場が推理小説の面白さのひとつで,それは本書に登場する探偵役のドルリイ・レーン氏についても同じである.最初はシェイクスピアなどを引用しながら語る暇を持て余した引退俳優で,もしかして安楽椅子探偵(現場に赴かずに事件を解決する探偵)なのかと思っていたが,小説を読み終えたときには頭脳・調査術・話術すべて揃ったこの人物に惹かれていてシリーズを読みたくなった.どうやら『X』に続き,『Yの悲劇』『Zの悲劇』があるようだ.

 

Yの悲劇 (角川文庫 ク 19-2)

Yの悲劇 (角川文庫 ク 19-2)

 

 

Zの悲劇 (角川文庫)

Zの悲劇 (角川文庫)

 

(表紙が何かの参考書みたいだなぁ笑.『Z』なんてZ会にありそう...) 

 

ミステリィも当然のことながら面白かった(推理小説をあまり読まないからわからないが,これって名作って称されている?).事件の克明描写や調査で明らかになる様々な事実の中に,さりげなくヒントが隠されている.でも,事件の鍵となる証拠と同じくらい雑多などうでもいい情報もあって,それが面白いと思った(あからさまな伏線は張られていないと思った).それをひとつひとつピックアップして組み立てて考察するも良し,逆に犯人の思考をロジカルに推論して割り出すこともできるし,謎解きをに深入りせず物語の進行に任せるのももちろん良い.いろんな読み方ができる作品だろう.僕は,伏線に気付けなかったので,進行に身を任せてレーン氏の推理を聞いて,すげーって思った人です.

 

森博嗣のGシリーズの新刊タイトルが『χの悲劇』(X(エックス)ではなくギリシャ文字のχ(カイ))で,明らかに『Xの悲劇』を意識していると思われる.森作品恒例の引用文(雰囲気を盛り上げるBGMのようなもの)は,きっと『Xの悲劇』からと予想して先駆けて読んでみた次第である.『X』を未読のときよりも作品を数倍楽しめる気がしていて楽しみだ.Gシリーズはどうやら『χ』に続き,『ψの悲劇』『ωの悲劇』の後期3部作となるようだ.

χの悲劇 (講談社ノベルス)

χの悲劇 (講談社ノベルス)